研究概要 |
トキソブラズマRH株虫体及びIn vitrro培養の無血清培地遠心上清より、硫安分画及びDEAEトヨバ-ル、トヨバ-ルHW55S、DEAEー825、TSKG3000SWの各種カラムを使用して特異酵素(NTPase)を精製した。その結果、RH株より二種類のNTPase(I,II)を精製することができた。二種類のNTPaseはタンパク化学的には非常に類似していた。まず分子量が同一どあること、活性のある四量体の酵素の等電点が二種類の酵素共に5.7付近で両者を区別できなかった。またN末端のアミノ酸配列を19残基比較したところ、ホモロジ-は約50%であった。しかし、二次元電気泳動でサブユニットの等電点を調べたところ、多少の違いを観察することができた。すなわち、NTPaseーIのサブユニットの等電点は6.4で、NTPaseーIIのそれは6.2であった。酵素学的に最も違う点は基質との反応性であった。NTPaseーIはATPを加水分解するがADPはほとんど分解しない。ところが、NTPaseーIIはATP、ADP共に同じ速度で加水分解する。両者の酵素に対する抗体を作製し抗原性の違いを調べたところ、両者は共通のエピト-プを持ち、抗原性の違いを区別することができなかった。これらの結果から、NTPaseーI及びNTPaseーIIは共に血清診断用抗原として優劣がつけられないことがわかった。このことは逆に、NTPaseを診断用抗原として用いる場合、トキソプラズマノストレ-ンの違いによるアイソザイムの有無を考慮しなくても良い利点と考えられる。事実、酵素抗体法を用いた患者血清中の抗NTPase抗体価は、標準法である色素試験抗体価と非常によく相関した。このことは米国微生物学会誌(J.Clin.Microbiol.)の1992年5月号に掲載される。
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