研究課題/領域番号 |
03670206
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 英生 筑波大学, 際礎医学系, 教授 (40033203)
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研究分担者 |
青木 泰子 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (80202480)
小池 和子 筑波大学, 社会医学系, 講師 (60110508)
清水 徹 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (80235655)
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キーワード | 下痢原性大腸菌 / 細菌病原因子 / エンテロトキシン / 細胞付着性 / 細胞毒性因子 / PCR法 |
研究概要 |
臨床的感染性下痢性である乳幼児から分離されたE.coli株で、その病原因子が特定されていない大腸菌70株について、エンテロトキシン(易熱性、耐熱性)、組織侵入性、細胞付着性、志賀様毒素の検出・同定を試みたが、いずれの既知病原因子も検出されなかった。血清型については特定の型に偏ることもなかったが、型別不能の株が32株あった。培養細胞(HEpー2,HeLa)への付着性を、菌株の培養条件を変えて(菌の細胞付着性因子を誘導するような条件を工夫して)調べたが、2株においてのみ付着性が亢進したが、再現性に問題があった。これらの保存菌株は生化学的性状検査ではE.coliと確認されているが、遺伝学的にも確認する必要があり、リボソ-ムの塩基配列について調べた。PCR法により、種を越えて保存されている部分と種独特に保存されているリボソ-ムの塩基配列を指標にして、プライマ-を設定して同定する方法を開発して、近縁関係にある腸内細菌群のものと比較検討した。PCR法では制限酵素による切断パタ-ンを併用すれば、赤痢菌と大腸菌をも鑑別できることが判明し、これにより分離株を検定したところ全てがE.coliのパタ-ンを示した。グラム陽性菌である、ウェルシュ菌やセレウス菌の病原因子とも比較すべくそれぞれの菌種の病原因子について、毒素活性やその遺伝子のクロ-ニングを行っているが、ウェルシュ菌の溶血毒やその調節遺伝子と同じ遺伝子は持っていない。セレウス菌では、従来のエンテロトキシンとは異なる細胞毒性因子を発見しその同定をすすめているが、分離大腸菌にはこのような細胞毒は検出されなかった。乳幼児急性下痢症から分離されたE.coli株で、その病原因子が確定されていない大腸菌から新しい病原因子は発見出来なかったが、遺伝子解析とその発現調節機構の解析手技の開発により今後さらに検索することにより未確定因子の同定が可能になるあろう。
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