研究概要 |
ウシサイログロブリンアフィニティクロマトグラフィー,モノQカラムクロマトグラフィーにより高度精製したC.difficile菌体内トキシンAの生物学的活性を検討した。本トキシンAの細胞毒性,マウス致死活性,結紮腸管液体貯留活性に対する最小有効量は,各々0.83ng,8.7ng,5ngであり,菌体外トキシンAとほぼ等しかった。しかしながら,菌体外トキシンAと異なり,菌体内トキシンAは赤血球凝集活性を示さなかった。即ち,トキシンAは菌体内では赤血球凝集活性の発現がない状態で産生され,菌体外に放出される時,あるいは培養液中で赤血球凝集活性が発現される可能性が示唆された。精製菌体内・外トキシンAに対する抗体を作製し,両トキシンAを血清学的に比較検討した。抗菌体内トキシンA抗体,抗菌体外トキシンA抗体を用いたオクタロニーゲル内沈降反応においては,菌体内トキシンAおよび菌体外トキシンAとの間の沈降線は一本のみ形成され,かつ完全に融合した。菌体内・外トキシンAの生物学的活性に対する両抗トキシン抗体の中和能を比較検討した。両抗トキシンA抗体の対応するトキシンAに対する中和能は,細胞毒性,マウス致死活性,結紮腸管液体貯留活性のいずれにおいてもほぼ等しい値(1:128〜1:256)を示した。また,両抗体は互いに異るトキシンAに対しても同程度の中和能を示した。菌体外トキシンAの赤血球凝集活性に対しては両抗体共に1:16の中和能を示した。以上の血清学的所見は,菌体内トキシンAの分子量は菌体外トキシンAと幾分異るが(菌体外トキシンAの分子量は末変性PAGE上580KDaであり,菌体外トキシンAより40KDa大きい),抗原的には両者は同一であることを示唆している。さらに,菌体内トキシンAは赤血球凝集活性を示さないが,赤血球凝集に対応する抗原性を有していることを示している。
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