結核症の病理組織像に、チ-ズ様壊死、空洞形成の病変がみられるのは周知の事実であるが、これは結核菌由来の物質に特異的なT細胞による遅延型過敏症の結果とされている。また、これらの病変が結核菌に対してどの様に作用するかについては知られていない。我々は、この科学研究補助の基で、上記病変の発生の機構に誤りのあることを見いだした。 即ち、結核菌等の抗酸菌を主として構築するミコ-ル酸含有糖脂貭は、T細胞に全く関与されない条件のもとでも、上記の結核病変を形成することを見いだした。ミコ-ル酸含有糖質は、水に不溶性であるためフオスファチジル・コリンにより構成されるリポゾ-ムに封入して、皮下、腎臓内、肝臓内、筋肉内に注射すると、注射箇所に1〜2日の内にマクロファ-ジを主とする細胞集団の膿瘤が形成された。この腫瘤は約10日後チ-ズ様変性の膿瘍に移行し、結核病変に見られる病理組織像に酷似していた。また、この病変は、T細胞をもたないマウスであるヌ-ドマウスでも全く同様に形成された。更に、ヌ-ドマウスにより形成された膿瘍を構成する細胞を遠心洗條後、組織染色により観察すると共に、他の正常マウスに移入することにより、そこに新たな膿瘍が形成され、膿瘍を形成したのは活性化されたマクロファ-ジであることが証明された。既に、我々は、ミコ-ル酸含有糖脂貭が腹腔マクロファ-ジを著しく強く活性化し、同系マウス由来の腫瘍細胞を直接の接触により溶解傷害し、同腫瘍の増殖を阻害する物貭を分泌することを報告してきたが、今回、この活性化マクロファ-ジがT細胞の関与なしに、in vivoで膿瘍の形成に働くことを明らかにした。
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