研究概要 |
補体は生体内に侵入した微生物表面で抗体依存的,非依存的に活性化される。活性化にともなって微生物表面には多数のC3bがクラスター状に結合し,C3bの一部はさらにiC3bをへてC3dgまで分解される。これらC3由来のフラグメントで標識された微生物は,補体レセプター(CR1,CR2,CR3)を持つ様々なエフェクター細胞に認識され,生体防御に重要な様々な反応を引き起こして処理される。本研究は生体防御における補体・補体レセプター系の役割,特にC3bクラスターの構造とBリンパ球上の補体レセプターの機能の解析を目的としている。本年度は,マウスの補体レセプターMCR1とMCR2のリガンド結合特異性と,それらに対するモノクローナル抗体の効果を明確にした。マウス脾臓から精製したMCR1とMCR2を用い,セファロースビーズに結合したマウスC3b,iC3b,C3dとの結合を調べた。MCR1は,いづれのリガンドとも強く結合した。C3bとの結合は,MCR1だけに反応する抗体8C12で部分的に阻害され,MCR1とMCR2の両方に反応する7G6抗体あるいは4E3抗体と8C12を組み合わせると完全に阻害された。MCR1とC3dの結合は,7G6と4E3で阻害された。MCR2はC3dと強く結合し,C3bと弱く結合した。どちらの結合も,7G6と4E3で阻害された。これらの結果を,MCR1とMCR2の一次構造と合わせて考えると,(1)MCR1とMCR2は,7G6と4E3で認識される共通部位でC3dに結合すること,と(2)MCR1は8C12で認識される部位でC3bに結合することの2点が明確になった。
|