研究概要 |
1.P.cepacia JN106株の産生する低分子溶血物質の精製法を確立した。菌体洗浄液をAmberlite XAD2カラムクロマトグラフィーと逆相HPLCで精製した。溶血活性は2つのピークに検出され、UV吸収(220-350nm)による等高線地図からいずれも純粋であることが示された。これらを溶出の順にcepalycin I,cepalycin IIと命名した。 2.cepalycin I,IIはおなじUV吸収スペクトルを示すが、OD当たりの溶血活性はcepalycin IIがcepalycin Iの4倍であった。cepalycin IIをLC-FAB Massで分析した結果、分子量240で-OH基の存在が示唆された。また、アルカリに不安定であること、および、溶媒での溶解性から両親媒性であることが示された。 3.cepalycin I,IIは等しい抗真菌活性をもち、その強さは溶血活性を基準とするとamphotericin Bに匹敵した。 4.電子顕微鏡による観察から、cepalycinは赤血球にドーナツ状構造物を形成して溶血を起こすものと推定された。 5.JN106株よりトランスポゾン変異法を用いて4種類の非溶血変体を作成した。さらにJN106株DNA断片をP.cepaciaクローニングベクターに連結し、これら変異体の溶血能を相補する断片を単離した。 6.4種類の非溶血変異体のトランスポゾン挿入部に隣接したDNA断片をプローブとして、JN106と由来を異にする臨床分離溶血株と非溶血株、ならびに非溶血性の環境分離株における溶血物質産生遺伝子群の存在を調べた。遺伝子の1つは溶血株にのみ存在し、他の遺伝子は一部の非溶血株にも存在することが示唆された。これらの結果から、cepalycinはP.cepaciaの溶血株に広く分布する溶血物質であることが示された。 7.DNA型別法によりP.cepacia院内感染を解析し、感染源が汚染ネブライザーであることを証明した。
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