研究概要 |
抗酸菌と大腸菌のプラスミドから作成したシャトルベクターpYT937の抗酸菌における複製領域について更に検討を行った。まず複製に必要な最少の領域を決定するため、既に報告した複製領域を含む2294塩基対をもつ断片の両端から種々な長さの欠損を起こさせ、それらの複製能について調べた。その結果、複製に必要な最少の領域は約1.5kbのDNAに含まれることが明かとなった。この約1.5kbの断片には260個のアミノ酸をコードする遺伝子1個を含むが、この遺伝子はDNA結合蛋白に特有な構造を有している。一方、この遺伝子の上流部分(断片の左端部分)には、繰り返し配列(20塩基前後の)に富む部分があり、恐らくこの部分が複製開始領域であろうと考えられた。この部分の構造が複製に重要な役割を果たしていることは、繰り返し配列内に位置する制限酵素(Sph I) 部を利用して、4塩基対の欠損を起こさせると、このものの複製能力が失われることになることからも明かである。またこの遺伝子部分と繰り返し配列の部分を同じ分子内ではあるが離れて存在するように構造を変化させたプラスミドを作成したところ、複製能が失われることが明かとなった。従ってこの両者の位置関係も複製のために重要であることが知られた。なお、このプラスミドはBCG以外でもM.phlei,M.smegmatis,M.fortuitum,M.intracellulareなど、多くの抗酸菌で複製可能であることが明かとなった。また、これまでにこのベクターを用い、M.tuberculosis,M.bovis,M.Kansasii,M.fortuitum,M.smegmatisの遺伝子ライブラリーを作成した。
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