研究概要 |
抗酸菌・大腸菌シャトルベクターpYT937の抗酸菌の宿主域について更に検討を行った。このベクターは、M.bovis BCG,M.phlei,M.fortuitumでは複製できるが、M.smegmatisでは複製できなかった。次に、このpYT937の持つ2.3kbの他に、その近傍の断片を有する種々の欠損断片を、pACYC177に挿入し、組み換え体プラスミドを作成し、各菌を宿主として、形質転換能を調べた。その結果、pYT937の持つ2.3kbの他に、その上流の1.6kbを有する場合は、M.smegmatis J15csで複製できた。しかし、このベクターでも、M.smegmatisR株,P株,F株,mc^2155では複製できなかった。この1.6kbの塩基配列を決定し、open reading frameを検索した。その結果、約30kdの蛋白質をコードする遺伝子を見出した。M.bovis BCG,M.phlei,M.fortuitumでの複製には、この1.6kb断片は必要ではなかったので、これらの菌の場合、この遺伝子の機能を補佐する遺伝子を染色体上に有している可能性があると考えられる。そこで、この1.6kbをプローブにして、サザンハイブリダイゼーション実験を行った。しかしこの遺伝子にhomologousな遺伝子は、M.bovis BCG,M.phlei,M.fortuitumにも、M.smegmatisにも見出さなかった。M.scrofulaceumには4株中3株にhomologousな遺伝子が存在した。この遺伝子の特異性が認められた。この遺伝子がM.smegmatisの中でどの様な機能を果たしているかは、今後の興味ある課題である。またこのベクターは、迅速発育菌由来のプラスミドpAL5000由来のベクターと共存できることを見出した。これは、今後の研究に非常に有用である。
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