研究概要 |
抗酸菌・大腸菌シャトルベクターの構築を行った。遅発育菌M.bovis BCG及び、迅速発育菌M.smegmatis J15csで複製できるシャトルベクターとして、カナマイシン耐性マーカーを有するpYT923とクロラムフェニコール耐性を有するpMT923を構築した。また、遅発育菌M.bovis BCGでのみ複製できるシャトルベクターとして、カナマイシン耐性を有するpYT937,クロラムフェニコール耐性を有するpMT933を構築した。pMT933はpAL5000と共存でき、30代まで安定に保持され、遺伝学的研究に有用であると思われる。これらの抗酸菌での複製に必要な領域の解析を行った。その結果、BCGでの複製には、上流に繰り返し構造の多数存在する領域と、約29kdのrep蛋白質をコードする1つのopen reading frame(ORF)を含む約1.6kbが必要であるが、M.smegmatis J15csでの複製には、更にその上流の領域が必要であった。この領域には、約29kdの蛋白質をコードするORFが存在した。この蛋白質の機能は不明である。今後の興味ある研究課題である。これらの断片をプローブにして、サザンハイブリダイゼーションを行った結果、親株のM.scrofulaceumの3株にのみhomologousな遺伝子が存在し、他の8種類の抗酸菌にはhomologousな遺伝子は存在しないことが明らかとなった。この遺伝子は菌種に特異的であることが示された。これらのM.scrofulaceum3株に存在するhomologousな遺伝子の解析も今後の課題である。またこのベクターに、カナマイシン耐性のプロモーターの下流にHBs抗原遺伝子を連結したものを挿入して、BCGでの発現を見たが、発現しなかった。この発現も今後の課題である。
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