Legionella pheumophilaはA/Jマウスのマクロファージ(Mφ)内では増殖するが、C57 BL/6(B/6と略)など他のほとんどのマウスMφ内では増殖することができない。この感受性/抵抗性の系統差は、申請者らがLgn-1と命名した、15番目の染色体上の一遺伝子により支配されていることがわかっている。本研究ではこの系統差の解明を遺伝学、分子生物学、生化学、細菌学、形態学などからアプローチした。(1)遺伝学的アプローチ:B/6のLgn-1^γ遺伝子をA/Jに組み込ませたcongenicマウス(A.BLgn-1)の確立が目前である。(2)分子生物学的アプローチ:Lgn-1遺伝子の15番目の染色体上の位置をより詳しく決定するために、遺伝子マーカーのプローブを入手し、Southern blottingを行っている。(3)生化学的アプローチ:A/JMφ内での本菌の増殖を阻害する物質をスクリーニングした結果、2-deoxy-D-glucose(2-dG)が阻害することを見出し発表した。現在2-dGがMφの殺菌力を高めているのか、増殖をサポートするシステムを阻害しているのか解析中である。(4)細菌学的アプローチ:Philadelphia-1株がMφ内で増殖する際に大量に産生している24kDタンパクをクローニングし同定した(投稿中)。細胞内増殖のメカニズムをタンパクレベルで解析することが可能となるであろう。(5)形態学的アプローチ:L.pneumophilaがMφのファゴソーム内で増殖する際にはファゴソ一ムへの小胞の融合、ミトコンドリアの接近、リボソームの付着が電顕により観察される。申請者らはこれらの現象をMφが菌の増殖を助けるサポートシステムと位置づけているが、2-dGはこのシステムの出現を抑制することを見出した。このサポートシステムの誘導をLgn-1遺伝子が支配しているのか、さらに24kDタンパクが関係しているのか解析中である。
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