研究課題/領域番号 |
03670240
|
研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
小島 朝人 国立予防衛生研究所, 感染病理部, 室長 (30100077)
|
研究分担者 |
佐多 徹太郎 国立予防衛生研究所, エイズ研究センター, 室長 (00162397)
倉田 毅 国立予防衛生研究所, 感染病理部, 部長 (50012779)
|
キーワード | 組換えワクシニアウイルス / 病原性 / ウイルス感染病理 / 安全性 / サル |
研究概要 |
欧米諸国においてはすでに、AIDSワクチン試験として健常人あるいはHIV-1感染者に組換えワクシニアウイルスが接種されているが、その安全性に関する検討はほとんどなされていない。そこで本課題においては、実験動物(マウス、モルモット、ウサギ)へのこれまでの接種実験の成績を基に、本年度はサルへの組換えワクシニアウイルス接種実験を実施した。即ち、WHO痘瘡ワクチンLO株からさらに弱毒株として分離されたワクシニアウイルスLC16株の組換えウイルスが低病原性であることが実験動物において示されたことから、ワクチン安全性試験用カニクイザルにこの組換えウイルスを接種し、感染病理学的検討を行なった。その結果、組換えウイルス(10^7TCID_<50>)皮下接種群、静脈内接種群のいずれも手足の麻痺等の臨床症状を示さず、有意の体重減少もなく、接種ウイルスに対する血中抗体価の上昇が認められた。静脈接種サル群でも、接種7日目の脳内を含めた各種組織中にウイルス抗原は検出されず、in situ hybridization法による遺伝子検出法によっても組換えウイルスは検出されなかった。従って、LC16株の組換えウイルスは末梢あるいは流血中から脳内に浸入していないことが示唆された。一方、サルの左右両側脳内に5×10^6TCID_<50>の組換えウイルスをそれぞれ直接接種した群においても何ら臨床症状の異常は観察されなかった。これらのサルの脳病変として、蜘蛛膜下腔に単核細胞を主体とした瀰漫性の細胞浸潤、脳皮質の小血管周囲に軽度の細胞浸潤を認めたものの、脳実質の変性は観察されなかった。この細胞浸潤部位に一致して免疫組織学的にウイルス抗原が観察され、in situ hybridizationではウイルス遺伝子が検出された。しかし、組換えウイルスの分布は限局しており、脳全域あるいは全身への拡散は認められなかった。これらの結果は弱毒株組換えワクシニアウイルスワクチンの安全性を示唆している。
|