研究概要 |
T細胞が抗原を認識し反応するためには、主要組織適合抗原複合体(MHC)分子、抗原ペプチド、T細胞抗原レセプタ-(TCR)の3者による3分子複合体の形成が必要となる。したがって、抗原ペプチドがMHC分子に結合できれば、その抗原ペプチドはT細胞を活性化できると考えられる。そこで、我々は、マウスMHCクラスII分子の各ハプロタイプ特異的に結合し、T細胞を活性化するペプチドを同定しようと試みた。 ハトチトクロ-ムc43ー58番残基類似ペプチド50Vのアグレト-プ(抗原上のMHC分子に結合する部位)である46、54番残基を種々のアミノ酸に置換することにより、マウスMHCクラスII分子の各ハプロタイプ特異的に結合し、T細胞を活性化するペプチドを発見することができた。すなわち46番残基が疎水性のフェニルアラニン(F)であるペプチドはA^<b,d,q,s>分子に結合し、負の電荷のグルタミン酸(D)であるペプチドはA^k分子に結合し、正の電荷のアルギニン(R)を有するペプチドはA^<u,v>分子に結合した。またこれらのペプチドの54番残基がアラニン(A)であるものは最も強く各クラスII分子に結合した。以上のことより、ハトチトクロ-ムc由来の骨格を有している限り、各クラスIIハプロタイプに対して、46、54番残基が常にアグレト-プとして働くことが判明した。 さらに、50Vのエピト-プ部分である50番残基の前後のアミノ酸を置換しても、クラスII分子との結合には影響が見られないことから、インフルエンザAichi株のヘムアグルチニン(HA)の一部のペプチドを上記の各クラスII分子ハプロタイプ特異的に結合するペプチドに置換挿入したハイブリッドペプチドを作製した。現在、これらのペプチドを使用してインフルエンザに対するペプチドワクチンの作製が可能か否か検討中である。
|