細胞内セカンドメッセンジャーcAMP濃度が上昇すると一群の遣伝子の転写が誘導されるが、これらの遣伝子はその転写制御領域に共通のDNA配列CRE(cAMP response element:TGACGTCA)を有している。一方CREはcAMP濃度に依存しない、いわゆる構成的な(constitutive)エンハンサー活性を持っている。これまでに多くのCRE結合蛋白質がcDNAクローニングにより同定されたが、機能的にはMontminyらにより同定されたCREBと私達が同定したCRE-BP1の2つに大別できることが明らかとなってきた。すべてのCRE結合蛋白質は塩基性アミノ酸クラスターとロイシンジッパー構造からなるDNA結合ドメイン(いわゆるB-ZIP構造)を持ち、ホモダイマー又は他の蛋白質とのヘテロダイマーとしてCRE配列に結合する。CREBは細胞内cAMP濃度の上昇により活性化されたPKAによりリン酸化され、転写活性化能が上昇する。従ってCREBはCREがcAMP依在性のエンハンサーとして機能するときに作用する転写因子である。一方私達が同定したCRE-BP1の活性はPKAにより制御されず、CREが構成的なエンハンサーとして機能するときに作用する。CRE-BP1の特長はホモダイマー又はc-JunとのヘテロダイマーとしてCREに結合することである。c-Junとc-FosはCRE結合蛋白質と同様にB-ZIP構造を持ち、c-Jun/c-Fosのヘテロダイマー(転写因子AP-1)はTRE(TPAresponse element:TGAGTCA)配列に結合する。従ってCRE-BP1はc-JunをCREに作用させるための役割を持っており、cAMP経路とTPA経路間のクロストークに重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。
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