免疫系のレパ-トリ-形成とその維持の機構を解析する目的で、BALB/cミエロ-マ、MOPC104E(M104E)が産生するミエロ-マ蛋白イディオタイプをモデル抗原として、イディオタイプ特異的T細胞の誘導のための基礎実験を行なった。M104E抗体重鎖cDNAを、発現ベクタ-pZIPNEO(SV)、pMTSNEO、BCMGSNEO等に組み込み、DBA/2マウス由来単球系細胞株P388D1にtransfectした。しかしpZIPNEO(SV)transfectantでは中間宿主細胞のpackaging efficiencyが悪いためか、十分な発現を示さなかった。一方pMTNEO transfectantに対してはBALB/c抗ーM104E T細胞応答は殆ど認められなかった。transfectantでのmRNA発現量が対照細胞M104Eの約1/10であるため、十分なT細胞応答が誘導できなかったことが考えられ、ベクタ-を高発現能を有するBCMGSNEOに変更して再度試みた。現在、M104Eに匹敵するmRNAを発現する細胞株が得られており、T細胞応答能の解析を急いでいる。 細菌性ス-パ-抗原によるT細胞レパ-トリ-の偏倚現象の解析と自己反応性T細胞による自己免疫性変化の発現を調べるために、消化管常在細菌Klebsiella oxytocaのマイトゲン活性を調べた。しかし培養上清、ホルマリン固定細菌いずれにもマイトゲン活性は認められなかった。Klebsiella pneumoniaeについて検索する計画である。 T細胞の胸腺内分化・成熟・選択過程を解析する目的で、胸腺上皮細胞依存性T細胞株に対するモノクロナル抗体(QR6)を得た。QR6は胸腺上皮細胞依存性の増殖をほぼ完壁に抑制した。QR6抗原の胸腺細胞での発現は、マウス胎生16ー17日をピ-クに成熟するにつれ減少した。QR6抗体は分子サイズ92kDの蛋白を認識し、胸腺内での最も未熟な細胞にのみ発現される抗原を認識する。現在抗血清の作成を試みており、これを用いてQR6対応抗原の遺伝子クロ-ニングを計画している。
|