免疫系レパートリー形成とその維持の機構を解析するために、BALB/c myeloma MOPC104E抗体重鎖(M104Eと略)遺伝子、マウスミエリン関連糖蛋白質(MAGと略)遺伝子を発現する細胞株を樹立した。M104E genomic rearranged DNAをIg enhancer、Cμ genomic DNAに繋ぎ、pSV2neo vectorに、MAGはmouse cDNAを発現べクターBCMGSneoに組み込んだ。宿主細胞はMHC class I、II両方とも発現するA20.2J B lymphomaを用いた。M104E蛋白を免疫して得たT細胞ラインは、M104E発現細胞に特異的に応答を示した。M104E類似遺伝子産物を発現する対照細胞と比較して、CDR2が抗原決定基となっていることが強く示唆されるため、CDR2相当ペプチドを合成し、特異性の検討を行っている。MAGは、自己免疫性神経障害原因遺伝子の1つである。MAG発現細胞をマウスに免疫して、class I、II拘束性T細胞の誘導を試みている。またMAGは、グリオーマ細胞に導入・発現できており、この細胞も同系マウスに免疫して、T細胞感作を試みている。 T細胞の胸腺内分化・成熟・選択機構を解析するために、胸腺上皮細胞株(SL10.3)、並びに、これに依存して増殖応答を示すT細胞株(N-9F)が獲られている。また、この増殖応答を阻止するモノクロナル抗体・抗血清を得た。N-9F免疫では100kdの蛋白が検出され、これが胸腺内の最も未熟な細胞に発現されていることがわかった。現在N-9Fを大量培養し、対応抗原の単離・精製と、その部分アミノ酸配列の決定を進めている。SL10.3免疫では、45kdと60kdの2種類の蛋白が同定できた。SL10.3cDNA libraryを抗血清でスクリーニングして、candidate cDNAが取れており、DNA sequenceの結果新しい遺伝子であることがわかっている。現在full-length cDNA の単離を急いでいる。また、M104EやMAG遺伝子をSL10.3細胞に発現させ、中枢性の免疫寛容モデルの作成を試みている。
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