内因性レトロウイルスはゲノムを介し重直に感染する。レトロウイルスの発現調節単位としてウイルスゲノム両端に存在するLTRが知られている。本当該年度の目標は、未知乳癌ウイルスの感染様式の再検討、存在形態及び栄養条件の作用機序を検討することにある。 1)感染様式の再検討及び存在形態:外因性レトロウイルスは、人に感染性を持つものも含め一般に乳汁を介し、消化管から吸収され、Tリンパ球に内在化し一定の期間潜伏すると考えられている。今回、我々は、内因性の乳癌ウイルスと外因性乳癌ウイルスを区別する目的から、皮フの一部からDNAを抽出し遺伝子型を決定していた。その過程で偶然、皮フに大量に、ゲノムに組み込まれないFree Linear DNAとして、乳癌ウイルスが存在する事を見出した。その後、Foster Nwisingなどを用い、このウイルスが乳汁を介し感染する確証を得た。現状では、乳汁により感染した場合、T細胞中で潜伏すると考えられているが、我々はこれ以外に皮フなど外胚葉系器官にFree DNAとして存在する事を証明する事が出来、これらも潜状源となる可能性を示し得た。 2)栄養条件の作用機序:従来より、マウスは変温動物である事が知られていた。今回我々は、寿命延長効果のあるエネルギー制限が、連日、夜半から早朝にかけ、マウスの低体温発作(Daily Torpor)を誘発する事を見出した。さらにこのDaily Torporにより、マウスの細胞増殖能が著しく低下し、環境温度を上昇させる事により、エネルギーの増加なく細胞分裂能が正常化する事を見出した。以上より、エネルギー制限による制御機構として、(1)Daily Torpor、(2)細胞増殖速度の抑制、(3)これらに付隨するホルモン系の影響の3つが考えられた。既に明らかになっている構造との対応関係を今後検討したい。
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