研究概要 |
本年度の研究成果は,従来の測定方法では困難であった組織中の金属分布の2次元イメ-ジングを非破壊蛍光X線分析法を用いて確立した。更にこの手法を種々の生体試料に応用した。 1.有機水銀化合物を投与した小型動物の脳・腎をパラフィン包埋した。この試料を本法でHg,Zn,Cu,Seの金属元素を測定して,2次元イメ-ジングを作成した。一方,対応した組織中のこれら金属元素を従来の方法で測定して,両測定値が一致したことから、本法の妥当性を確認した。 2.ラット,モルモットの脳,乳児の延髄の金属元素のイメ-ジングはZn,Cuの明瞭な2次元分布がみられた。Znは試料に平均的に分布したが,Cuは周縁部に集積した結果であった。 3.塩化メチル水銀と亜セレン酸ソ-ダを単独または併用してラット,モルモットに投与した。Hgは線条体,皮質に高く,延髄,小脳では低かった。しかし,併用投与によってHg,Seの蓄積とHgとZn,Cu,Seとの分布の相関性が高くなった。 4.MMCとEMCをラットに投与した場合,両化合物間でHgの顕著な相違は認められなかったが,投与初期には小脳で水銀値は高濃度であるが、発症時には皮質の方が高値となった。 5.無投与ラット,乳児,及び成人男性の腎のZn,Cu,Seの2次元分布はいずれの金属元素も髄質よりも皮質に多く分布する傾向がみられた。また乳児の腎についてはZn,Cu,Se間の相関係数は0.332から0.460間で必須元素間の分布の相関性は低値であった。しかし、EMC投与で発症したマウスの腎では,HgとZn,Cu,Seとの相関係数は0.76から0.90と高く,しかも必須元素間の分布の相関係数も0.75から0.88と高い値となり、水銀毒性は微量元素の組織での変動をうかがわせた。
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