研究概要 |
1),ストレス蛋白であるヘムオキシゲナ-ゼは、均一化した臓器ではほぼ酵素活性と抗体を用いた定量法とが一致するが、細胞培養系では本酵素と共役するチトクロ-ム還元酵素量が十分でなく酵素活性が蛋白量を必ずしも反映しないことがある。そこで精度良く蛋白量を測定するためにラットのcDNAを発現系ベクタ-pUC18に組み込みE.coli.のDHー5に形質転換し全蛋白の10%以上のヘムオキシゲナ-ゼペプチドを産生する株を得た。これから同ペプチドを均一に精製し、ウサギに投与する事によって非常に高品位の抗体を得た。 2),ラット肝臓からえた繊維芽細胞とヒト由来の細胞において、酸素濃度を変えて培養するといずれの場合にも酸素濃度を上げた場合には変化なかったが、下げると6ー24時間で2ー5倍に上昇した。ラットの場合には重金属、SH試薬、熱処理等によってヘムオキシゲナ-ゼの誘導が起こるが、ヒトの場合には熱処理の効果が見られない。そこで今回の低酸素濃度による誘導が他の誘導因子と同質であるか否かを同定するために、それぞれの誘導因子との種々の組み合わせで負荷して検討中である。 3),ラットcDNAから得た抗体を用いると、非常に低レベルのヘムオキシゲナ-ゼの定量が可能となった。そこでこれまではその存在すら明らかにされていなかった血清中の同蛋白について試みた結果、痕跡程度ではあるが明らかに存在しており、その定量が出来る見込みがついた。また、肝疾患を有するヒトの血清中の同蛋白は明らかに上昇しており、これを基にストレス暴露の指標に出来る可能性があり、現在そのプロトコルを検討している。
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