本年度の研究の目的は、呼吸器アレルギ-の発症に関与している要因(粉じん曝露、アトピ-素因、ライフスタイル、金属感作)を、我々のコホ-トで確定することである。そこで横断的な曝露ー対照研究と症例ー対照研究を行った。 曝露ー対照研究では、過去に粉じん曝露したことのある者を含む曝露群(434名)での喘息の頻度(6.5%、28/434)は、非曝露群(301名)での有病率(3.0%、9/301)に比し有意に高かった。曝露中に喘息を発病した者は、企業の衛生管理者の配慮で配転されることが多いので、既曝露群も曝露群に含めて解析を行った。 症例ー対照研究では、喘息有病者を症例群とし、これに性、年齢をマッチさせて当該企業から選んだ者を対照群とした。症例群に粉じん曝露歴が有意に多く見られた。アトピ-性素因の頻度も、症例群に有意に高く(15/31)、コバルトに対する特異的抗体価を有する者も有意に多く(8/26)認められた。喫煙率は両群で差がなく、その他のライフスタイル要因(酒、食事習慣、スポ-ツ、睡眠、肥満、労働時間)の頻度にも差はなかった。粉じん曝露濃度(コバルト濃度)を測定ないし推定し得た者では、両群でのそれぞれの平均濃度に差はなかった。肺疾患の既応歴の分布にも差はなかった。 以上より、本コホ-トでは、粉じん曝露に関連して喘息が発病しており、それにはアトピ-素因と金属への特異的抗体産生が有意に関連していることが示された。しかし、アトピ-性素因と金属感作のみでは、すべての喘息の発病を説明できないので、今回の研究で解析した以外の要因を今後追求する予定である。
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