研究概要 |
現代社会に於けるストレスは種々な形をとり,人間生活に影響を与えている。ストレスによる生体反応は種々あるが,いずれにしても生体機能の恒常性を維持する機構が働いて適応がなされていると考えられている。従ってストレスに対する適応の仕組を知ることはその働きを維持し強化して健康な生活を送る上で重要な意味を持っている。 発癌をはじめとする種々の細胞機能障害に酸素ラジカルが関与しており,脂質の過酸化の原因となっている。ストレスによってもこのラジカルの生成が明らかになっている。脳,特に間脳,下垂体系はストレスを制御する上で重要な機能を果たしているが,脂質成分に富む脳組織の抗酸化作用はその機能を維持する上で重要と考えられる。 脳組織より脂質を抽出し,高速液体クロマトグラフィ-を用いてリン脂質成分を分画した後,その中の過酸化物量を化学発光分析法を用いて定量することを試みている。現在は定量に用いるリン脂質過酸化物の標準物質の作成,及びHPLCによる脂質成分中のリン脂質分画法の検討を行っている。他方ストレスによって同様に生成され,直接あるいは間接に抗酸化作用を示すと考えられるメタロチオネインを脳局所から微量定量するための免疫化学的定量法の検討を行っている。Cd投与ラット肝臓より,カドミウムメタロチオネイン(CdーMT)をSephadex G75,Mono Qカラムにより精製した。このCdーMTーIIを抗原として,ウサギを免疫し,抗血清を得た。現在このMTに対する抗体と以前に開発した同じ抗原に対するモノクロ-ナル抗体を用いて,サンドウィッチ法によるメタロチオネインの免疫化学的微量定量法を検討している。
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