研究概要 |
血管の炎症は内皮細胞への好中球の付着から開始されることが知られており、好中球を誘導する最も強力な因子は、補体の活性化によって生じるC5である。血管内皮細胞が補体第3成分C3を産生分泌することを我々は先に報告したが、他にも数種類の補体成分の産生が知られている。我々は、血管内皮細胞が産生する補体蛋白および補体調節因子が、血管の炎症の促進又は阻止に如何に関わっているかを解明するために実験を行なっている。 生体内で各種の細胞間調節を行なっているのは生理活性物質であるサイトカインであるが、この中でも炎症反応等で重要な役割を演じるTGF,TNF,IL-1,IFN-γの作用によって内皮細胞から分泌される補体蛋白産生が、どの様に影響を受けるかについて概要を得ることが出来たので、その一部を報告した(川上、植木他,日本免疫学会総会1991年11月; 川上、植木他, 炎症12:489-490,1992; A,Ueki,Y.Kawakami et al. 8th International Congress of Immunology,1992)。 ヒトから取り出して培養した血管内皮細胞はageingが速やかに起るので、大量に同じ細胞を増やすことが不可能であり、これが実験を遂行する上での種々の妨げとなる。この問題を解消するためにSV40 virusのlarge T antigenを細胞の遺伝子に組込むことで、不死化により大量の細胞を得ることができると考え、プラスミドを用いてトランスフェクションを行なっている。間もなく使用可能な細胞株が得られると思われる。
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