最近のわが国における循環器疾患の動向については、脳卒中による死亡が順調な低下傾向をしめし、かつては増加傾向をしめしていた虚血性心疾患も最近の年齢調整死亡率では横ばいか低下傾向にある。しかし、脳卒中において脳梗塞の相対的な増加を抑制し、虚血性心疾患の更なる減少をはかるには従来より進められている高血圧対策のみでは不十分であり、動脈硬化症や高コレステロール血症の予防対策が急務とされている。本研究の目的は、高血圧と比較してより若年期での発症が認められ、また、それが高い可能性で成人期まで移行していくと考えられている高コレステロール血症について、中学生を対象にスクリーニング調査を実施して栄養状態等の関連要因を検討することであった。秋田市近郊の中学校で実施している循環器検診の中で調査したデータを解析することにより、概ね以下のような研究成果を得た。 発育段階にある中学生男女において、血圧と形態指標(身長、体重、BMI、上腕背部皮脂厚、肩胛骨下部皮脂厚、体脂肪率、脂肪重量、除脂肪重量)との間に有意な相関は認められるが、相関の程度は低いものであった。しかし、境界域高血圧や高血圧に分類される中学生においては、過体重や体脂肪率が高値をしめすという明らかな形態的特徴が認められた。血清総コレステロールについては、男子で高値を示す者の皮脂厚は厚く、体脂肪率は高いという形態的特徴が認められた。これらの形態的特徴は指導の参考になるものと考えられたが、発育段階での必然的な変化を含んだ形態指標を健康管理に適用することの難しさも想像された。また、同一の対象者を中学の2年生時から3年生時にかけて追跡調査すると、男子では血圧変化と肥満度変化の間に対応関係のあることが確認された。女子でも同様の傾向が伺えるものの、男子よりは不明瞭であった。
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