研究概要 |
大動脈硬化の促進因子に関する予防的介入効果を各個人の生体膜レベルから検討するためには、この目的に合致したIn vitro試験が必要である。そこで本研究の開始年度である平成3年度においては、大動脈硬化に関連したヒト細胞の障害モデルとしてのIn vitro負荷試験に関する基本的検討をおこない以下の点を明らかにした。 1.ヒト赤血球膜の過酸化脂質とNaーK ATPase活性との関係:赤血球の酸化的ストレスによる変化をNaーK ATPase(WalzとChanの方法による無機リンの測定を使用)と過酸化脂質(八木蛍光法によるTBA測定)で把握するためには健常集団のこれらの測定値の分布に関する情報が必要であり、その検討を実施した。結果を以下に要約する。(1)30ー40才男性のNaーK ATPaseは女性のそれより有意に高値であった。(2)男性のTBA値は50才代が30ー40才代に比較して有意に上昇していた。 2.DNA損傷修復機構に関するADPリボ-ス合成酵素活性の評価法の検討:ガン患者やガン家族歴を有する者のリンパ球の本酵素活性が低下しているとの報告がある。大動脈硬化の悪化・進展にもガンのイニシェ-ション・プロモ-ション過程が規定されており、その観点からヒトリンパ球の本酵素活性を1次予防で利用すべく方法の検討を実施した。結果を以下に要約する。(1)採血後血液は室温(15℃程度)保存で18時間以内に処理しないと酵素活性の低下が著しい(2)リンパ球培養中に5%の血清添加を実施すると本酵素活性が有意に上昇した。 3.染色体損傷防御要因としての培養酸素濃度の検討:ヒトリンパ球の姉妹染色文体交換(SCE)を指標に40%,20%,5%の酸素濃度低下での培養結果を比較したところ、40%ではヒトリンパ球の分裂が著しく抑制されたが、5%では20%に比較してSCEの頻度が有意に減少した。
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