研究概要 |
10-12週齢Balb/c雌マウスを用いた。排卵を誘発させるために48時間間隔でPMSとHCGを投与し、翌朝膣栓の見つかったものを妊娠マウスとし、その日を妊娠第1日とした。妊娠4日目に子宮を取り出し、培養液によって子宮を洗い出し、胞胚(blastocysts)を流出させた。 (実験1)既知変異原である塩化ニッケル(NiCl_2)の初期胚への影響を調べるため、8-chamber dishの各セルに培養液を0.8mlづつ注入し、おのおののセルに一定数(3-5個)の胞胚を分けた後に塩化ニッケルを0(control),0.8,1.6,3.2,6.5,13.0,26.0μg/mlの濃度で添加した。このdishを37℃,CO_25%の条件下で6日間培養を行い、次の2つの指標を用いて初期胚への影響を評価した。すなわち、(1)Trophoblast Outgrowth(栄養膜芽細胞の萌出;TO)の形成、(2)Inner Cell Mass(内細胞塊;ICM)の形成の2つである。(2)の内細胞塊についてはさらにICMの形成なし、1層ICM、2層ICMの3段階に分類した。 (実験2)つぎに、塩化ニッケルと磁場との複合影響を実験1と同様の方法で検討した。ただし、塩化ニッケルの濃度は、0.2,0.8,3.2μg/mlを添加し、その後磁場は実験用電磁石による0.8T(テスラ)の磁場に30分間暴露させた。 実験1の結果、NiCl_2の濃度が高くなるにつれてTOおよびICMの形成率が低下した。なかでも最も感受性の高かったのは2層ICMの形成であり、ついで1層ICM,TOの順になっていた。実験2では実験1と同様にNiCl_2の濃度が高くなるにつれてTOおよびICMの形成は抑制されたが、磁場暴露群と磁場非暴露群との間に有意な差は認められなかった。
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