研究概要 |
アオウキクサは,小型で均一な個体を同時に多数得ることが出来,増殖速度が極めて早く,生育環境諸条件の変化に鋭敏な反応を示す,等,実験生物として有利な多くの条件を備え,かつ水環境では極めて普通に見られる浮標高等植物である。これを用いて,現在問題となっている酸性水のモニタリングを行うと共に,水域の汚染や酸性化が生態系に及ぼす影響についても検討を行うことが本研究の目的である。本年度は各種河川水,湖沼水,雨水を採取してアオウキクサ育成を試み,同時にpHのちがいに対するアオウキクサの反応について,検討を行った。 1.河川水,湖沼水,雨水を用いたアオウキクサの育成 各処より採取した水のそのままアオウキクサを生育させると,第一に藻類,菌類の増殖が著しく,第二に栄養塩が十分でない為,一週間以内に植え込んだアオウキクサは枯死した。そこで試料水を高圧滅菌してから用い,また普通アオウキクサ培養に用いる培養液条件となるよう栄養塩を添加する等の前処理を行った。この育成実験の結果アオウキクサはpH4.1〜4.6に調整した試験水において最も良好な増殖を行うことが明らかとなった。また試料水中のリン,及び硝酸イオン,アンモニウムイオン濃度がアオウキクサ生育量及びその開花にも関わることが推察された。 2.各種pH条件下におけるアオウキクサ増殖と重金属取り込み 1の結果に見られるように,pH4.1〜4.6の範囲でアオウキクサの増殖速度は最大となることが示された。pHによる増殖度の差が明確になるのは植え込み後5日目であった。しかしカドミウム0.1ppmを添加した培養液では,3日目に既にpHによる増殖度の差が明らかとなっており,これは,pHにより初期の重金属取り込み量が著しく異なるためと推察された。
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