研究概要 |
聴覚障害者が医療を求める際のコミュニケ-ションを改善するためには,(1)コミュニケ-ションのどの部分がどのように阻害されているかといった問題点の分析と,(2)問題解決にむけての介入支緩,の両者が必要である。我々は,問題解決を優先させる立場から,(2)の立場を採用し,絵による自覚症状の可視化・表現を試みた.長崎県ろうあ福祉協会の方々3名(うち1名は手話通訳者,2名は聴覚障害者)とともに絵のわかりやすさや改良すべき点について意見を交換しながら作画を進めた結果,30種類の自覚症が可視化された.自覚症の可視化・表現を進める過程で,以下の5つの経験則が得られた.(1)できるだけ単純な絵にする.(2)あまりに漫画的な表現は避ける.(3)まず顔の話情を描き,それによって症状の全体的なイメ-ジを表現する.(4)症状が全身的なものか,局所に限局したものであるかを意識する.(5)症状の連想を容易にするために,対処行動を簡単に描く.(6)症状の連想を容易にするために,周囲の状況を簡単に描く.(7)時間的経過の考慮.次に,いくつかの集団について,上述のような原測で描いた絵の実際のわかりやすさを調べたところ,誤解の理由として,(1)絵の細部への過度の注目,(2)社会的経験の不足,(3)手話との混同がの3つが関連していることがわかった.これら3点を考慮し,絵による自覚症の小冊子を作成することができた.現在は,小冊子の実際の使用を通して,絵の個別のわかりやすさや,絵による自覚症の活用形態について見直しと改良を進めている.
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