研究概要 |
初年度の研究で自覚症の可視化に関し、7項目の原則(1.絵の単純化、2.漫画的表現の回避、3.顔表情の活用、4.全身/局所の意識化、5.対処行動活用、6.周囲の状況の活用、7.時間的経過)が得られた。本年度は幾つかの集団について、この7項目の原則で描いた絵の実際のわかりやすさを調べた。保健看護学生の場合は講義時間中に、手話通訳者と聴覚障害者の場合は、ろうあ協会や手話研究会の会場において図を見てもらい、個別の絵が意味すると思うところを、言語で記入してもらった。言語表現が十分でない障害者の場合は、通訳者が手話を言語に翻訳した。回答者の属性別に理解できた絵の数(平均値)を比較すると、学生群は28.0と高く、手話通訳者群と聴覚障害者(高文章力群)は25.5、25.6とほぼ同数であり、聴覚障害者(低文章力群)は16.6と低値を示した。典型型な絵につき回答者の属性別に、その絵を理解した人の割合を検討した。学生の理解は82%から100%と安定した高値を示すのに対し、他の群では理解度が絵によって大きく異なった。障害者の理解度が低い絵については、回答内容を考慮した上で絵の改善を試みた。 30枚の絵の中で数枚しか意味の了解ができなかった重度の障害者2名に面接し、手話通訳の助けを得て、どう解らなかったかを聞き取った。誤解の理由は以下の3点にまとめられる;(1)絵の細部への過度の注目,(2)社会的経験の不足,(3)手話との混同。上記(1)、(2)の場合はいずれも経験則6に従って描いた周囲の状況が混乱の原因となっていたため、周囲の状況がなくても理解できる絵に変えた。また(3)については、手話的表現を一切避けるか、むしろ手話的表現をむしろ積極的に絵に取り紺んでゆくか、二つの方向が考えられた。
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