研究概要 |
ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)によるDNA増幅法を利用した免疫グロブリンG(IgG)および免疫グロブリンκ型L鎖の遺伝的多型検査法につき検討を行った。当初の研究計画では、PCRと標識DNAプローブによるハイブリダイゼーションを組み合わせた方法を採用する予定であったが、PCRのみにより目的が達成可能と考えられたため、当初の計画を一部変更して、以下に示す方法により実験を行った。 [方法]1.抽出DNAから1回目のPCRにより免疫グロブリン遺伝子の一部分を増幅した。 2.1回目のPCR産物の一部を試料として、免疫グロブリンの各アロタイプの遺伝子に特異的なプライマーを使用した2回目のPCRを行い、産物を電気泳動後、増幅断片のバンドを観察して遺伝子型を判定した。 上述の方法により、IgG3遺伝子に存在するG3m(t)アロタイプの遺伝子とこれと対立関係にあるnon-G3m(t)の遺伝子、またIgG1のG1m(f)アロタイプの遺伝子とこれと対立するG1m(z)アロタイプの遺伝子、さらに免疫グロブリンκ型L鎖のKmアロタイプのKm^<・1>、Km^<・1,2>、Km^<・3>各対立遺伝子を検出し、遺伝子型の判定を試みた。 [結果]κ型L鎖遺伝子の検出では1回目のPCRにより試料DNAから各対立遺伝子の変異部位を含む目的塩基配列部位(353bp)が増幅され、その増幅産物の一部を用いた2回目のPCRによりKm^<°1>、Km^<°1,2>、Km^<°3>各対立遺伝子の検出が可能であった。72名の試料につき本法により検査した結果、Km°3/Km°3型が38例、Km°1,2/Km°3型が30例、Km°1,2/Km°1,2型が4例みられ、遺伝子頻度はKm°3=0.736、Km°1,2=0.264と推定された。IgG3のtおよびnon-t遺伝子の検出では、1回目のPCRで目的塩基配列部位(726bp)が増幅され、2回目のPCRにより各対立遺伝子の検出がほぼ可能であった。IgG1のfおよびz遺伝子については現在なお検査条件を検討中である。
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