研究概要 |
犬の小腸に全長30cmのル-プを形成し,ル-プ内に17%エタノ-ル約30mlを注入した後,門脈,肝静脈,大動脈及び下大静脈血中のエタノ-ル並びにアセトアルデヒド濃度を経時的に測定した。アセトアルデヒド脱水素酵素阻害剤であるジサルフィラムもしくはシアナマイドで前処理した後,エタノ-ルを投与して血液中のアセトアルデヒド濃度を増加させると門脈血中のエタノ-ル濃度は低濃度となり吸収速度が明らかに低下し,またル-プ内からの回収液量が増加した。この結果はアセトアルデヒドが直接的乃至間接的に腸管からのエタノ-ル吸収を抑制していることを示唆している。吸収抑制因子は種々考えられるが、今回は門脈血流の変化をみる目的として,門脈に血流測定用のプロ-ベを装着し,トランジットタイム血流計で測定し,平成3年度科学研究費補助金で購入したサ-マルアイレコ-ダで記録した。 エタノ-ル単独投与では門脈血流に変化はみられなかったが,アルコ-ル脱水素酵素阻害剤であるピラゾ-ルで前処理して血液中にエタノ-ルが増加した状態では約20%の血流減少がみられた。一方アセトアルデヒド阻害剤で前処理して血中にアセトアルデヒドを増加させると門脈血流は徐々に減少し,投与150分後には約50%の減少がみられた。現在はアセトアルデヒドによる門脈血流の減少がアセトアルデヒド自身によるものか、神経系等を介して行われているのかを各種薬剤を使用して検討している。 なお今回の研究の成果は第2回病態生理学会で発表し,第76次日本法医学会総会で発表する予定である。
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