研究概要 |
精液中のγーglutamyl transpeptidase(γーGTP)は、腎・肝等の膜結合型γーGTPとは分子量、アミノ酸組成および免疫学的反応性において差異があることを報告した(Biochim.Biophys.Acta,1077,259ー264,1991)。この精液γーGTPに対するモノクロナ-ル抗体の作製を試みた。 精製した精液γーGTPでBalb/cマウスを免疫し、その脾細胞をマウスミエロ-マ(P3U1)と融合させた。培養上清中の抗体のスクリ-ニングにはELISAとイムノブロッティングを併用し、抗原として精液および腎のγーGTPを用い、精液に特異的な抗体の選択を行った。480ウェル中14ウェルに精液γーGTPに特異的な抗体産生が認められた。そのうち5ウェルのハイブリド-マを限界希釈法によりクロ-ニングした。その結果、3種の抗ヒト精液γーGTP抗体産生ハイブリド-マSGI、SG2およびSG3を樹立した。免疫グロブリンクラスはSG1がIgG2a、κ isotype、SG2およびSG3はIgG1、κ isotypeであった。3種のハイブリド-マをCDF1マウス腹腔に移殖し、一匹のマウスから5〜10mlの腹水を得た。抗体の精製はプロティンA・アフィニティ-クロマトグラフィ-に従い、一部をLCービオチン化した免疫組織学的染色(ABC法)ではSGIは前立腺および精嚢、SG2は前立腺、SG3は精嚢に局存するγーGTPを認識した。尚、肝および腎に対しては陰性であった。この結果は精液γーGTPは分泌される器官により構造の一部に相違をもつことを示唆している。SGIおよびSG2を固相化し、ラベルしたSG3とのサンドイッチELISAにより各種試料中の精液γーGTPの検出を行った。精液は10^5倍希釈液まで検出可能であった。(0.D. 0.1)。唾液、汗、血清、子宮頚管粘液では陰性であった(0.D 0.03以下)。また、肝疾患等で血清γーGTP活性の高い試料(100mU/m1前後)でも陰性であった(0.D. 0.03以下)。以上から、抗精液γーGTPモノクロナ-ル抗体により精液特異γーGTPの検出が可能となった。
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