これまでいろいろな論議のあるショック発生のメカニズム解明の第一歩として、細菌性ショックであるエンドトキシンショックの発生成因を解明する目的で、ラットの肝臓、腎臓、心臓および肺を用いて多面的に検討した。その結果は、次のとおりである。 1)いずれの臓器においても、血管壁に多数の白血球が粘着侵入し、血管内皮細胞障害、間質の浮腫および血栓形成など血管系の障害像が観察された。また、肝細胞壊死、腎臓の近位尿細管浮腫および心筋細胞浮腫など実質細胞の変性像も観察された。 2)ケミカルメディエーターであるTNFおよびLTは、いずれも炎症性細胞(マクロファジィ、白血球など)および間葉系細胞(メザンギウム細胞、間質細胞など)で産生放出されることが明らかとなった。このようにして産生されたTNFは、血管内皮細胞表面のレセプターに付着し炎症性細胞粘着に大きな役割を果たすことが考えられ、さらに粘着した炎症性細胞から産生されたLTにより血管透過性亢進など血管障害がもたらされることが示唆された。 3)従来ショックにより生じた虚血障害あるいは血管障害により実質細胞変性の発生が考えられていたが、菌体毒素投与により実質細胞で内因性に産生されたTNFあるいはLTが、直接実質細胞障害に関与している可能性が考えられた。 以上、本研究により、エンドトキシンショックでは、菌体毒素投与により産生されたケミカルメディエーターであるTNFおよびLTが、エンドトキシンショックの病態発現に大きく関与していることが明らかとなった。
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