研究概要 |
平成3年度の計画としては、腫瘍細胞が産生する種々の生理活性物質の内、autocrine的に腫瘍細胞の増殖を促進する物質および腫瘍随伴症状を呈する物質の産生制御について検討することにしていた。第一の、腫瘍細胞増殖促進物質を検討中、エンドテリンが線維芽細胞の細胞内Caイオン濃度を上昇させ、細胞の増殖を促進することを見いだした。これが細胞内Caプ-ルからのCaの放出と、細胞外から細胞内へのCaの流入の増加とによることをつきとめたが、エンドテリンのこの作用の機構を検討しているうちに、今まで考えられていた細胞内情報伝達系では説明出来ない現象を見いだした。即ち、細胞内プ-ルからのCa放出をmediateするとされているinositolー1,4,5ーtrisphosphteが関与していないかもしれないことを示唆する成績を得た。今後この点を詳細に検討する予定である。一方、腫瘍随伴症状で最も多い高Ca血症の原因物質であるPTHrPの産生制御については、従来、PTHrPのラジオイムノアッセイの感度が十分でなかったため、培養上清のPTHrPを測定出来なかったので、より良い測定系を第一ラジオアイソト-プ社との共同研究により検討した。その結果、上清中のPTHrPを直接測定出来る見通しがたった。それまでの間、PTHrPの産生をNorthern blottingで検討して来た。ATL細胞を用いたin vitroの系においては、インタ-ロイキンー1α及びグルココルチコイドがPTHrP mRNAの発現を抑制し、また、フォルボ-ルエステル(PMA)及びエンドテリンがその発現を促進することを示唆する成績を得た。今後は、PTHrPのラジオイムノアッセイが可能になるので、同様の調節が行われているか否かを蛋白レベルでも検討する予定である。可能であれば、in vitroで得られた結果がin vivoにも当てはめられるか否かを検討する。
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