研究概要 |
種々の悪性腫瘍がエンドテリン(ET)を産生・分泌しているが、私達はETが線維芽細胞のCa^<++>濃度を上昇させ、それにより細胞増殖を促進することを見出している。このことからETはパラクリン的に作用し、癌組織の中に結合識が増生して行く過程を促進しているものと推定される。細胞内のCa^<++>濃度の上昇は細胞外からのCaの流入と、inositol-1,4,5-trisphosphate(Ins-1,4,5-P_3)による細胞内CaプールからのCaの放出によることが一般的であるが、H4年度の研究の結果、ETは線維芽細胞でIns-1,4,5-P_3は増加させないことを確認した。ETは血管平滑筋細胞ではIns-1,4,5-P_3を増加させ、またGPRは線維芽細胞でもIns-1,4,5-P_3を増加させた。従ってETと線維芽細胞の組み合せの時のみIns-1,4,5-P_3の増加が見られないことになる。このことからETは線維芽細胞においてIns-1,4,5-P_3以外のsecond messengerを介して細胞内Ca^<++>濃度を上昇させている可能性が示唆された。本年度は更に悪性腫瘍における高カルシウム血症惹起因子であるPTH様因子(PTHrP)の産生についても検討した。PTHrPのラジオイムノアッセイ系を確立し、その血中濃度を測定した。健常成人19名の血中PTHrP濃度は35.7±15.6pmol/l(mean±SD)であった。悪性腫瘍患者(ATL2列、肺癌4例、肝細胞癌9例、その他3例)について検討したところ、高Ca血症を呈した症例(ATL2例、肺偏平上皮癌3例)では72〜1000pg/mlで、有意に高値を示した。これらの症例では化学療法等で血清Ca値が正常化した時にはPTHrPも正常化していた。血清Ca値が正常の悪性腫瘍13例のPTHrP濃度は正常範囲であった。慢性腎不全患者13例ではPTH同様PTHrPも高く、499.5±161.3pmol/lであった。以上から、ATLや肺偏平上皮癌では高率にPTHrPを産生・分泌し、高Ca血症を起こすことが立証された。
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