研究概要 |
1.ETに関しては、メサンギウム細胞において各種増殖因子がprotein kinase Cを介してET産生を亢進させ、一方β-agonistがprotein kinase Cを介してET産生を抑制することを示した。この結果は論文として報告した(Kidney Int 41:350-355,1992)。RT-PCR法、Northern blot法を用いてET receptorsの遺伝子発現を検討したところ、細胞の周期に応じてET receptorsの発現が変わるのを観察した。休止期の細胞ではETbが、また増殖期ではETa受容体が発現していた。また血管拡張因子である一酸化窒素(NO)に反応してETの産生が亢進することを認めている。BSA腎炎においてET-1のタンパクが糸球体と集合管に発現していることも示した(発表予定)。以上より腎炎におけるETの関与が証明された。 2。Northern blotの解析によりHGF遺伝子はメサンギウム細胞には発現しているが、尿細管細胞には発現していないことを示した。HGFのreceptorであるc-met遺伝子はメサンギウム細胞にはなく、尿細管細胞に認められた。HGFはメサンギウム細胞に対して増殖作用は無いが、尿細管細胞に対しては著しい増殖作用を示した。またHGFは尿細管細胞のNaK-ATPase活性を上昇させた(BBRC182:960-965,1992)。HGFとc-metのmRNAは偏腎摘、阻血腎、急性腎不全モデルで上昇しており(BBRC187:1454-1459,1992)、また臨床例においては急性腎不全例で血中HGF濃度が上昇していることを認めている。これらのデータはHGFがparacrine factorとして尿細管細胞の増殖、再生や機能調節に関与していることを示している。
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