これまでの研究で肺胞マクロファージにおける膜型腫瘍壊死因子(mTNF)発現がリポ多糖類(LPS)やインターフェロン-γ(IFN-γ)などのいわゆるマクロファージ活性化刺激によって誘導され、mTNFは膜表面に発現された分子量26kDaの膜貫通型TNF分子によるものであることを明らかにした。昨年度はマクロファージにおけるmTNF発現様式についての検討をTNF感受性を示すL929細胞を用いた生物学的測定法により行ったが、この測定法はL929細胞とパラホルムアルデヒドで固定したマクロファージの細胞間接触を必要とするため、mTNFの高発現域では定量性に問題があることが明らかとなった。本年度はこの問題を解決すべくパラホルムアルデヒドで固定したマクロファージ表面に発現された26kDaのmTNFを直接測定しうるce11-ELISAシステムの検討を行った。その結果、市販の抗TNF単クローン抗体はmTNFを認識できないことが明らかとなり、やむを得ずウサギ抗ヒトTNF多クローン抗体を使用した。多クローン抗体の場合にはある程度の非特異的反応が避けられないため厳密な測定条件の検討が必要となるが、抗体の希釈倍数の検討と、マウス血清で非特異的反応をブロックすることにより十分な定量的測定が可能となった。現在、測定感度をあげるための検討を行っている。また、これらの解析過程においてリンパ球由来のサイトカインであるインターロイキン(IL)-4が肺胞マクロファージのmTNF発現を著明に抑制することを見いでした。さらにIL-4はLPSにより誘導された活性酸素産生を抑制するが、IFN-γにより誘導される活性酸素産生はむしろ増強するなど特異的な調節作用をもつことが明らかとなった。この結果をふまえてmTNF産生におけるIL-4の調節作用の詳細を検討している。なお、今年度補助金は研究遂行のための消耗品購入に使用した。
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