これまでの研究から、血小板第4因子(PF‐4)には塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の受容体結合阻害活性と血管新生抑制作用があること、PF‐4のbFGFの受容体結合阻害活性は、C末端のヘパリン結合部位にあることが明らかとしている。そこで本年度は、PF‐4のC末端合成ペプチドの血管新生に及ぼす影響について検討した。PF‐4のC末端から10、11、12、13、個のアミノ酸から成る4種類の合成ペプチドは、いずれもbFGFの受容体結合阻害についてはほぼ同等の阻害活性を示す。そこでこれら合成ペプチドの血管新生に及ぼす影響を評価するために、血管内皮細胞の遊走能、プラスミノーゲンアクチベーター産生能とコラーゲンゲル内での管腔形成能に対する作用を検討したところ、いずれの合成ペプチドにも同等の阻害活性を認めた。次に種々の腫瘍細胞と血管内皮細胞との混合培養における血管内皮細胞の管腔形成についても検討したが、一定の傾向は得られなかった。このことは、腫瘍による血管新生にはbFGFだけでなくさまざまな因子が複雑に関与していることを示しているものと考えられる。さらにin vivoの血管新生に及ぼす効果についても検討する予定であったが、定量性に問題があるため本年度では実施できず、次年度へ持ち越した。
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