研究概要 |
早くからインタ-フェロン(IFN)により修飾を受ける分子に関し検索を行ない、腫瘍関連抗原に対して得られたモノクロ-ナル抗体(MoAb)を用いて,腫瘍細胞上にHLA class IおよびHLA class II抗原以外にもIFN誘導分子(CL207抗原)が存在することを報告した(J.Immunol.138:1380,1987)。さらにIFN処理大腸癌細胞に対してMoAb HA58を作製,解析した結果、MoAb CL207およびHA58によって認識される分子はIntercellular adhesion moleculeー1(ICAMー1)であり,それぞれのエピソ-ドが異なることを明らかにした。またNK活性に対する反応性の違いなどからMoAb HA58はICAMー1上のLeukocyte function associated antigen 1(LFAー1)との接着部位を認識し,MoAb CL207は非接着部位を認識していることが判明した。一方,ICAMー1分子が標的細胞から遊離することを見出し,消化器癌とくに転移症側の血中に遊離ICAMー1抗原が著増するという興味深い結果を得た。(Clin.Exp.Immunol.85,3,1991)LFAー1との接着部位と認識するMoAb HA58はNK活性に対し著明な阻止効果を呈するが,LAK活性に対する阻止効果は僅少であった。一方,MoAb CL207は殺細胞機序には関与しなかった。また,抗ICAMー1 MoAb HA58のクロ-ニングを行ない,V領域・超可変部アミノ酸シ-クエンスを解析した。その結果,HA58 heavy chain variable region(V_H)complementary determining region(CDR)3およびV_L・CDR3にLFAー1の構成アミノ酸とhomologyが存在していた。この成績はICAMー1をリガンドとするLFAー1側の接着部位のアミノ酸配列を反映している可能性があり今後の課題としたい。さらにMoAb HA58に対する抗イディオタイプ抗体を多数確立し,イディオタイプ・ネットワ-クの検索,治療への応用など検討する予定である。
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