研究概要 |
最近、我々や他のグループによって末梢血リンパ球や単球は、表面に存在するVLA(verylate、antigen)を通して、細胞外マトリックス蛋白やそのフラグメントによって活性化されることが証明された。本研究は、炎症の場のモデルとして慢性関節リウマチ滑膜を用い、フイブロネクチンや滑膜内に存在するその分解産物が、炎症において、リンパ球やその他の細胞の活性化に実際関与しているか否かを検討するのが目的であった。先ず、VLA2,3,4,5,に対する抗体を用い慢性関節リウマチ滑膜組織でのこれらの抗原の局在を決定した。表層滑膜細胞では、VLA3,4,5の発現が、表層下滑膜細胞でも、VLA3,4,5の発現がみられたが、表層細胞に比し、VLA4陽性細胞の比率が高かった。リンパ球は主にVLA4を、内皮細胞ではVLA2,3,5の発現がみられた。滑膜Tリンパ球を純化し、VLA-4の発現を末梢血リンパ球のVLA-4の発現と比較しても差はみられなかった。しかし、慢性関節リウマチ関節液リンパ球でのVLA4の発現は、末梢血、滑膜に比較して有意増加していた。次に、VLAを発現しているこれらの滑膜細胞、リンパ球が、フイブロネクチン、フイブロネクチンフラグメントに活性化されるか否かを〔^3H〕thymidine、uptakeにて検討した。しかし、有意な変化はみられなかった。興味ある事実として、滑膜A細胞に著明な形態の変化がみられた。次に、これらの細胞の細胞内リン酸化の変化を検討した。種々のリン酸化蛋白の増加がみられる症例であったものの、一定の見解は得られなかった。次に、VLA-4の他のリガンドであるVCAM-1の発現を慢性関節リウマチ滑膜組織にて検討したところ、表層・表層直下の細胞に限局して多量に発現しており、表層、表層直下の細胞の細胞間interactionに、VLA-4とVCAM-1分子の結合が関与している可能性が示唆された。
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