研究概要 |
本年度はVLA-4のリガンドであるVCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1)の慢性関節リウマチ滑膜組織での発現を検討した。VCAM-1は、表層、表層直下のほとんどの滑膜細胞に発現していた。また、滑膜組織では、通常のVCAM-1分子の他に選択的スプライシングによるものが存在することが確かめられた。さらに、滑膜細胞を培養し、VCAM-1の発現を検討したところ、DR(-),nonspecific esterase(-),CD14(-)の樹状突起をもつ線維芽細胞様細胞に強く発現していた。また、これらの細胞のVCAM-1の発現は、IL1β,TNFαの刺激により、さらに増強した。次に、VCAM-1の発現を、変形性関節炎、慢性関節リウマチ滑膜組織で比較検討したところ、変形性関節炎滑膜組織では表層直下のVCAM-1の発現はほとんどみられないことが示された。慢性関節リウマチ滑膜表層・表層直下の多くの細胞はVLA-4を発現しており、これらの細胞間のinteractionにVLA-4,VCAM-1の結合が重要であることが示唆される。次に、VLA-4の発現を末梢血、慢性関節リウマチ滑膜、関節液Tリンパ球間で比較したところ、関節液Tリンパ球でのVLA-4の発現が著明であった。末梢血T細胞を、マイトゲンで刺激しても、VLA-4の発現増強は軽度であることより、慢性関節リウマチ関節液中に、VLA-4発現増強因子が存在することが示唆された。
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