全身性エリテマト-デス(SLE)患者60例、混合性結合組織病(MCTD)患者1例、強皮症(PSS)患者34例の末梢血よりリンパ球を分離し、主要組織適合抗原(HLAーA.B.C.DR.DQ)型を細胞障害試験で決定した。平行して、EDTA加血漿をもちいたアガロ-ス電気泳動による補体第4成分のアロタイプ型の決定を開始した。患者の残った白血球はDNA抽出のため凍結保存した。現在までに、SLE患者のDNAを分離精製し、数種の制限酵素で消化した後にアガロ-ス電気泳動を行ない、サザンプロット法でDNA切断片をナイロン膜に移動させ、DRβとDQβのcDNAをプロ-ブとしてhybridizationを行ない、restriction fragment length polymorphism(RFLP)のパタ-ンを検討した。また、それぞれの患者の発症年齢、臨床症状、検査所見の異常、治療の効果について調査した。今年度に得た結果は以下の通りである。 1.PSS患者では欧米の報告と異なりセントロメア抗体を有する例は殆どなく、約2/3の患者にSc170もしくはRNP抗体が陽性であった。患者の殆どがHLAーDQ1抗原を有しており、DQ1を有することがPSS発症の必要条件である可能性が強い。Sc170抗体陽性の患者は肺線維症を合併する頻度が高く、高率にHLAーDR2を有していた。従ってDR2を有している患者には早期より肺の検索が必要と考えられた。 2.日本人SLE患者全体ではHLAーDR2を有する患者が多いがその相関は著明なものではない。中枢神経障害や腎障を有する例にDR2陽性例が多い傾向があるが、現在のところ統計的有意差は認めせていない。 RFLPの検討では、白人SLEで報告されているような補体第4成分のC4Aのnull alleleおよびC4A領域の遺伝子の広範な欠損は日本人SLEでは認められない。 3.MCTDに関しては症例数を増やし検討中である。
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