研究概要 |
多くの自己免疫疾患の発症には複数の遺伝子が関与しており、その遺伝子のうち少なくとも1つはHLA領域に存在する。欧米では自己免疫疾患を発症した者はほぼ共通してHLA-DR3.DQ2ハプロタイプを有している。一方、日本人ではDR3やDQ2は極く稀で、自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(SLE)や、シェーグレン症候群(SS)、重症筋無力症(MG)、強皮症(SSc)などの発症を規定している遺伝子は明かでない。このことはDR3、DQ2自体が疾患発症を規定していない可能性、および欧米人患者のみの研究では判らなかったこれら疾患の不均一性を示している。本研究では、SLE:86例,SS:69例,MG:74例,MCTD/PM:36例,SSc:33例を対象として、臨床的細分類を行ない、HLAや補体蛋白型を決定するとともに、染色体DNAをrestriction fragment length polymorphism(RFLP)およびpolymorascchain reaction-RFLP法を用い患者と正常人のDNAを比較検討し、次のような結果を得た。SLE患者のうちDR4を有する例は腎障害を併発しやすいが中枢神経ループスに抵抗性であった。補体のC4Aのnull allclc(C4AQ0)を有する例は対象(1.6%)にくらべて高率(13.5%)に認められたが、RFLP法では白人SLEの報告と同様なC4A領域遺伝子の大きな欠損は認めなかった。したがって、C4A領域の遺伝子欠損がSLE発症を決定している可能性は低いと考えられた。MGでは30歳以下に発症した女性患者にDR53,DPB1【.thenmod.】0201,DQA1【.thenmod.】0301が強い相関を示すことが判明した。これらのことは30歳以下の女性のMGの発症機序は他のMGと異なること、およびHLAクラスIIの2つ以上の遺伝子が関与していることを示唆している。SScは肺線維症合併例が非合併例に比して高率にDR2,C4AQ0,Sc1-70を有しており、予後不良因子と考えられた。MCTD/PM患者にはDR2,DQ1陽性例が多く、Jo-1陽性例はすべて肺線維症を合併しDR1,DQ1が高頻度であった。
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