研究概要 |
1.原発性胆肝性肝硬変患者31例を対象に血清中のimmunoreactive MnーSODを測定した結果、30例(97%)の症例で他の肝疾患および正常対照にくらべ著明なMnーSODの増加を認めた。組織学的に早期のPBC(Scheuer I,II)においてもMnーSODが高い値を示した。また、PBC患者から得られた肝生検組織中においてMnーSOD酵素蛋白が増加している事が免疫染色で示された。 2.PBC患者の未梢血より赤血球を分離し、赤血球中のフリ-ラジカル消去系酵素の活性を測定したところ、Cu,ZnーSOD活性も亢進していることが判明した。すなわち、PBC患者においては、細胞のミトコンドリアに存在するMnーSODのみならず細胞質に局在するCu,ZnーSODを何らかの機序で誘導されている事が明らかになった。この成績は、PBCの病態にフリ-ラジカルが大きく関与している事を示すものである。 3.PBC患者血清中のサイトカイン(TNF,ILー1,ILー6)をELISAで測定したが、正常対照および慢性肝炎患者にくらべ有意の差は認められなかった。 4.ヒト肝癌細胞を用い、MnーSOD産生に与えるサイトカインの影響を調べたところ、TNF、ILー1およびILー6によってMnーSODが著明に誘導されことが明らかになった。TNF・ILー1がMnーSOD産生を誘導することは、すでに知られているが、ヒト肝細胞にたいする作用に関しては、これまで不明であった。また、ILー6にもMnーSODを誘導するという成績は、われわれが今回初めて明らかにしたものである。 あることを示す成績が得られつつあり、MnーSODの発現にprotein kinase Cが関与している可能性が示唆されている。
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