研究概要 |
P.Morrisらの方法に準じ,実験動物としてラットとイヌを用いTrinitrobenzenesulfonic acid(以下TNB)をethanolに溶解したものを経肛門的に注入し,それによる変化を経時的に内視鏡観察を行った。われわれの独創であるイヌにおける病変の作成は以下の方法による。内視鏡で回腸末端まで観察し,ガイドワイヤ-を挿入した後に新たに考案した4連バル-ンチュ-ブを挿入する。前後のバル-ンで境界された10cmのセグメントに100%エタノ-ルと蒸留水100mg/mlの濃度に溶解したTNBを10mlを順次注入し25分間留置する。内視鏡所見は客観化するために観察時の記載とフィルム読影の両方を参考にした。内視鏡察後に屠殺して,腸管を開いて肉眼的に観察後ホルマリン固定を行いHE染色による組織学的検討を行なった。 その結果 1.TNBとエタノ-ルによって作成される病変は潰瘍を主として,出血・浮腫であった。 2.潰瘍性病変は投与3週目以降に狭窄を残して治癒する傾向にあったが,3週以上持続する例も認められた。 3.組織学的には投与4週目にも慢性非特異炎症所見を認めた。 4.病変は屠殺することなく内視鏡的に充分観察可能であった。 5.炎症性腸疾患の実験モデルとしての本法は,比較的簡単で確実性が高く,今後この分野の研究に役立つものと思われる。 現在,ラットのモデルにおいては免疫学的な解析を行い,イヌのモデルでは炎症性腸疾患の腸機能の検討として胆汁酸の吸収試験を行い,その変化を研究中である。
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