研究概要 |
trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)とethanolにより作成されるラットの遠位大腸炎およびイヌの回腸炎が長期間持続する潰瘍性病変を特徴とし,内視鏡的および病理組織学的にヒトのCrohn病に類似していることを明らかにした。また,ラットの実験大腸炎の内視鏡的scoring systemを確立した。 さらに,この潰瘍性病変の治癒が遷延する免疫学的背景について検討を行なった。 ラットに既報の方法でTNBSとethanolを注腸投与したのち,投与後3日目に内視鏡を施行し,明らかな潰瘍性病変の有無により動物を2群(ul(+)群,ul(-)群)に分けた。各群について腸管病変の経過と血中の抗TNBS抗体価および腸管の壁のTNBSの局在を検討し,以下の結果を得た。 1.ul(+)群では投与後3週目で77%の動物に潰瘍の存続を認め,さらに血中抗TNBS抗体価の高値を認めた。 2.ul(-)群では投与後3週目で明らかな病変を認める動物は見られず,抗体価も低値であった 3.ul(+)群では潰瘍周辺の組織内にTNBSの局在を認めた。 以上より局所における抗原の侵入と,これによる感作が腸管の潰瘍性病変の治癒を遷延させる原因のひとつであることを示唆していると考えられ,ヒトの慢性腸管炎症の病態の理解にも利するものである。現在,ラットのモデルで各種薬剤の効果を検討中である。
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