腹壁表面からの胃電気活動記録(胃電図)は、空腹期食後期ともに1分間に3回の規則正しい周期で変動することが記録され、消化器症状を有しながら内視鏡的に異常所見の認められない症例では約半数の症例で異常波形の出現すること、また糖尿病性自律神経障害のある患者では殆どの症例に何等かの異常波形の出現することが認められた。小腸からの電気活動は、その周期が呼吸の周期と近いこと、発生電位の低いことから充分に解析に足る所見を得るに至らなかった。 健常症例に於いて、コリン作動薬あるいは抗コリン剤は胃電図上に特徴的な変化を示さず、また糖負荷による一過性高血糖でも胃電図には特徴的な変化は認められなかった。一方、グルカゴンは胃電図の振幅の著明な低下と周期性の乱れを生じさせた。ガストリンは投与直後に周期の早い波をごく短時間だけ出現させた。 24時間にわたる胃電気活動の記録では夜間に周期がやや延長する傾向を示す事、食事直後に一過性に周期が延長することが観察されたが、この時の消化管ホルモン(ガストリン、グルカゴン)には波形異常に一致するような特徴的な変化は認められなかった。 胃電気活動の調節には消化管ホルモンの中ではグルカゴンがやや軽度の影響を示す他には特徴的な変動を示すものはなく、またコリン作動系の薬剤による変化もみられなかった。しかし、糖尿病性自律神経障害患者では異常波形を示すものが多いことから神経系の関与が否定できず、胃電図の周期性を保ためには非コリン作動系の神経系の関与が大きいことが推測された。
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