【目的】炎症性腸疾患(IBD)の病因・病態に関与する免疫異常を腸管局所のサイトカイン遺伝子レベルで解析することを目的に、IBD病変部のTHFα、THFβmRNAレベルでの発現調節について、大腸粘膜からRNAを抽出し、逆転写酵素によるcDNAに変換後、polymerase chain reaction(PCR)法を用いるRT-PCR法により検討した。 【方法】1)内視鏡下、手術時に得られたIBD病変部、非病変部、健常対照(HD)粘膜からguadinium thiocyanate-phenol法によりtRNAを抽出し、逆転写酵素によりcDNAに合成後、PCRを施行した。TNFα primerで325bp、THFβ primerは375bpの増幅PCR産物を得た。mRNAレベルの発現量は内部標準としてβ-actin、T-cell receptorα鎖、pAW109RNA templateを使い、目的遺伝子と同時に増幅する定量的PCRを用い測定した。2)大腸粘膜の器官培養を行い、immuno-assay法で TNFα、 TNFβ産生能を測定した。3)器官培養下に腸内細菌壁成分のLPS(10μg/ml)を添加後、粘膜からtRNAを抽出し TNF mRNAレベルの変動を測定した。【結果】1)β-actinを内部標準としたmRNA遺伝子の定量では、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)の病変部粘膜で、HDに比し TNFαmRNAは32〜64倍、TNFβmRNAは4〜16倍の発現量を示した。IBD活動期の非病変部粘膜では、HDに比べTNFαmRNAの発現量が高まっていた。2)病変部粘膜でのTNFα産生量はCD23096pg/g tiusse、UC29004と、HD807に比して増大していた。TNFβ産生量はCD2414pg/g、UC2357とHD1504に比してわずかな増加を示した。3)IBD粘膜のLPS添加群は、非添加群に比べ4〜8倍のTNFαmRNAの発現増加を示したが、TNFβmRNAは変化を認めなかった。【まとめ】IBD活動期では病変部粘膜ばかりでなく、非病変部粘膜においてもTNFαmRNAの発現は高まっており、また腸内細菌壁LPSによりその発現量の増加を認め、病変進展の準備状態にあることが示唆された。
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