研究概要 |
胆汁うっ滞の原因の一つとして,毛細胆管周囲下ーアクチンの機能異常がある。機能異常はGーアクチンの重合不全,Fーアクチンの収縮不全に大別できるので,実験的肝内胆汁うっ滞モデルを使って、この2点の検討を目的とした。胆汁うっ滞はサイトカラシンB,ファロイジンで誘起し,本年度の研究計画,方法に従って検討した。 (1)ラット肝細胞内アクチンのGーアクチン/Fーアクチン比(G/F比)をDNaseI阻害法で検討した。サイトカラシン投与でG/F比は上昇し,ファロイジン投与で低下した。 (2)小腸上皮微絨毛を核としたGーアクチンの重合能に対し,胆汁うっ滞をおこす薬剤が如何に影響を及ぼすかについて,in vitroで検討した。サイトカラシン添加はGーアクチンの重合を完全に阻止し,ファロイジン添加は影響を与えなかった. (3)Fーアクチンの収縮能を検討するため,小腸上皮刷子縁を用いたバイオ・アッセイ系を確立した。この系を用いて,Fーアクチンの収縮能に及ぼす薬剤の影響を検討した。サイトカラシン,ファロイジンの両薬剤とも,小腸上皮刷子縁の収縮を阻止した。 以上の検討より,肝内胆汁うっ滞の原因として,サイトカラシンはアクチン重合不全と収縮不全,ファロイジンでは収縮不全が主であると推論できる。今後は,このバイオ・アッセイ系を用いる事により,肝内胆汁うっ滞の原因をヒトにおいて検討ができると考えられた。
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