研究概要 |
(目的)ヒトの消化管の中で粘膜面における局所的な防御能のなかで、免疫反応により異物抗原の侵入を調節する働きのあるGALT(Gut Associated Lymphod Tisue)の構成成分であるパイエル板において、老化の及ぼす影響を調べるため、パイエル板由来の細胞株の樹立とその免疫能の比較検討を行った。(方法)パイエル板より内視鏡的に採取した粘膜標本より分離したリンパ球の培養を、他の栄養細胞なしで継続した。老化の影響を検定するため、同意を得た悪性病変のない老年群(70歳異常)と若年群(40歳未満)とに分類し、各々の培養細胞株について、FACSによる細胞表面マ-カ-の分析、培養細胞上清に産生されるリンフォカインの定量,ならびにB細胞由来の免疫グロブリンであるIgA,IgG,IgMについて鋭敏な感受能を有するEnzyme Linked Immuno Solvent Assay(ELISA)のキットを用いて測定した。(結果)腸管由来の組織であり、細菌感染が懸念されたが、ポリエチレングリコ-ル液を使用して洗浄することにより、ヒトの回腸の主要なリンパ装置であるパイエル板由来のT細胞株の樹立に成功し,また細胞を増殖させる手技も確立され、今後も多くの症例において,加齢の及ぼす影響について検討が可能になることが期待される。T細胞群は、老年群より得られたものは若年群由来のものと比較して、リンフォカインの産生量の低下をはじめとして、その機能が低下している事が示唆された。次に腸管局所での抗体による防御機構に及ぼす老化の影響を調べた。IgAは、特に腸管内において重要な役割を果たす抗体であり、この抗体を産生するB細胞を調節する、前述のT細胞の仕組みについても充分に検討すべき余地がある。基礎的検討では、培養上清に産生されたIgAが老化群で増加しており、この機序について研究を開始している。
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