グルタチオンは酸素ラジカルから細胞を防御する重要な因子である。HepG2細胞を用いて肝細胞からのグルタチオン放出に及ぼす種々の薬物、ホルモン、サイトカインの影響を検討した。バソプレシンがグルタチオン放出を増加させることを見いだし、その系にプロテインキナーゼCが関与していることが明らかとなった。またcAMPを介する系、cGMPを介する系もグルタチオン放出に働くことがわかった。このことは酸素ラジカルにたいする防御機構に生体ホルモンが重要な役割を果たしていることが示唆された。 胆管閉塞ラットでは肝、腎グルタチオンが増加していたが、腎の過酸化脂質も増加していた。このモデルでは虚血一再潅流やゲンタマイシンによる腎障害が増強され、これには腎の過酸化脂質増加を伴っていた。このことは黄疸時に腎は酸化的ストレスにおかれており、刺激により容易に腎障害をおこし易いと考えられた。臨床で見られることが証明され、その機序が明らかとなった。 ラットを約1カ月間Carbonyl ironを含む飼料で飼育し、慢性鉄過剰ラットを作成した。肝内の過酸化脂質が増加していたほか、発癌と関連する8-hydroxyguanosineの増加が認められた。ヘモクロマトーシスの肝障害にラジカルが関与することを示し、またヘモクロマトーシスの肝に癌の発生が多い原因の1つを明らかにした。 カドミウムを1年間慢性投与したラットにおいては、肝、腎グルタチオンが増加していたが、過酸化脂質の量には変化がみられなかった。腎障害がみられたが、肝障害は明かでなかった。
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