平成3年度に引き続き、原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)の実験動物モデルとして老化マウスを用い、その胆管障害機構を検討した。「方法」使用したマウスは、SPF下で飼育した雌性 C57BL/6(Charles River Japan Inc.)である。肝組織内浸潤樹状細胞の同定を酵素抗体間接法で染色後光顕と電顕で行った。リンパ性樹状細胞の同定は一次抗体に京都大学理学部稲葉カヨ博士から供与された抗マウスリンパ性樹状細胞モノクロナール抗体(N418)を用いて行った。胆嚢上皮細胞の単離は6週齢マウスの胆嚢を無菌的に採り、半切し、0.05%コラゲナーゼ十ディペンサー(1A/20ml)で60分間処理し、10%牛胎児血清加HamF 12/DMEM等量培養液を重層し、5%CO_2インキュベーター内で初代倍養した。48時間培養後、24月齢マウスの脾細胞とともに3時間混合培養して、胆嚢上皮細胞と脾リンパ球との関係を観察した。「成績」N418陽性細胞は門脈城内に散在性に観察された。免疫電顕では、N418陽性樹状細胞が少数とその突起が多数観察され、突起はリンパ球と接触していた。培養胆嚢上皮細胞と Contactしているリンパ球はCD4陽性細胞で2.1±2.3%、CD8陽性細胞で 18.2±5.1%あった。CD8陽性細胞が胆嚢上皮細胞を障害していることが示唆された。老化マウスを用いてUDCAの効果を検討した。12カ月齢マウスにUDCAを6月間、通常使用量に相当する量を投与した。コントロールに比ベてUDCA群で胆管病変の出現頻度は低下傾向にあったが有意な差違ではなかった。「結論」老化マウスにおける胆管障害機構にはCD8陽性細胞が関与していることが再確認されるとともに、リンパ性樹状細胞もそれに関係していることが示唆された。
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